【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

君が想うよりオオカミ ♯1

「おかけになった電話は電波の届かない所にあるか、電源が···」

ちっ。

『 今日夕方人事部に急によばれて 』

そこまで打ってメールをやめた。
今日、仕事を定時であがってからもう6回目だ。

なんで連絡くれないん。

なんで返信こないん。

焦っていた。
福岡への転勤辞令が急に出たのだ。
その場でちょっと古くさいドラマのように、
辞令の書を破り捨てようとも思った。

「おーい!こーいち姐さーん。」

「はーい。今いきますう。」

沖谷 圭壱。
本業としては芸能プロダクションに勤め、
夜は道頓堀のゲイBAR『ルイーダ』でバイトをしている。
不況のさなか働けるだけましだ。
『辞令の書は消えてなくなりました。』
にしなくて正解だ。

ただ唯一、理解者である同期の彼女と連絡をとりたい...。

「姐さん休憩長すぎ~。
いつもの社長からご指名が入ってるみたいよう。」

どこにでもライバル心丸出しの、
嫌みったらしい輩はいるものだ。
このバイト仲間もそのたぐいだ。

フロアに戻ると、大阪出張の際は必ず寄ってくれる、
いつもの社長が饒舌に毒舌を吐いている。

「ここは熟女、熟女、熟女、熟女、熟女ばっかりで、
時々女優がいるかどうかだな!」
茶色のサングラスに、チャップリンの被っているような帽子
の出で立ちの社長は、ガハハハと下品に笑っている。

「おう姐さん、最近どう?」

月並みな社交辞令的な質問だ。
もう飽きていた。
でも指名料は馬鹿にならない。
我慢だ。

「なんか、うちのプロダクション、
おかげさまで最近儲かってるみたいでえ。
そうそう、事業拡大であたしも福岡に転属なのよ!」

「おお!そりゃ残念だなぁ。福岡か。
いいよなあ、こっちは無料体験お笑い系サイトの運営。
一銭のカネにもなんねぇし。」

そう言うと、いつもの社長は一気にジントニックを飲み干した。

「芸能プロっちゅうのは、そんなに儲かるんかね。
他に何かサイドビジネス...いや、なんか裏でやってんじゃないの~?」

「もう社長ったら酔って、」

携帯の震度が3くらいだ。

「うちのプロダクションなんか
まだまだ弱小集団だからやっとよ。」

携帯の震度はすぐに0となった。

「もうそろそろあがりなの。
ごめんね、東京ボケてβ代表取締役社長。
またね、ちゃおー。」
ライバル心むき出しの輩と交代し、
更衣室、ロッカールーム代わりの物置へそそくさと引っ込んだ。

彼女からのメールだ。
『カプセル 4 0    2』

カプセルホテルの402号室のこと?
何にしろ謎のメールだ。
普通じゃない。

突然、大凶のおみくじを引いた後のような、
嫌な胸騒ぎが込み上げてきている。
うちのプロダクションは確かに急成長。
でもその影でバーター裏取引の犠牲になっているタレントもいると、
業界内の噂も多い。

( 彼女のアパートに行ってみよう。 )

店を出て、自然と自転車のペダルを漕ぐスピードが速くなっていった。



to be next ♯2







【 職人名 】 ※敬称略

 おきゃん姐さん 

 熟女、熟女、熟女、熟女、熟女、時々女優

 東京ボケてβ代表取締役社長

 402

【 小ネ単語 】

 道頓堀のゲイBAR『ルイーダ』  
  おきゃん姐さんのお題から発生。

 ライバル心丸出しの嫌みったらしい輩
  そう、おきゃん姐さんのライバルといったらあの人。『○○江』

 カプセル
  もちろん、音楽アーティスト『 capsule 』由来です。

 茶色のサングラスに、チャップリンの被っているような帽子の出で立ち
  オフ会での、東京ボケてβ代表取締役社長さん実際のファッション。

【ストーリー】

 おきゃん姐さんのブログ、「女の子を好きになった?福岡に転勤する夢」がべースです。
 

 
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by tencho77 | 2009-05-10 00:37 | 【君が想うよりオオカミ】