【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

君が想うよりオオカミ ♯3

「午前3時、48分52・・・」

間違えて117を押してしまったようだ。

痛っ!

指にも軽い火傷をおってるようだ。

「はい。119番です!火事ですか?救急で···」

途中で切った。

大きい騒ぎにしたくない。
まだ予備軍とはいえ、アイドルを目指してている彼女の部屋。
そんなところからマネージャーの自分が救急車で運び出され···。

「なんで砕け散る・・・れろ・・・。」

くちびるが少し切れて、ろれつが廻らないままおもわずつぶやいた。

バラバラになったニンテンドーDSi

部屋には仙人が食べるような薄い霞っぽい煙と、
キナ臭い匂いが漂っている。

( とにかく部屋を出よう )

腰をおさえながらなんとか立ち上がり、
散らばっているニンテンドーDSiの部品を拾い集めはじめた。

人の居た形跡を残したくない。

何か入れる物は・・・。

フライドチキンファーストフード店のトートバッグ景品をみつけた。



拾い集めていくうちに、
ガチャポンカプセルみたいなモノが目に止まった。

ニンテンドーDSiの部品ではなさそうだ。

熱っ!

さっきの時報によれば、小一時間程気を失っていたことになる。
でもカプセルはまだ少し熱かった。

台所へ行き、鍋つかみでつかみとった。

「誰!そこで何をして・・・・・ケイゴ君?」

不意を突かれ、怯えた表情なった。

「ああ、管理人の田戸さん。」

少し安堵の表情に自然となった。
大家でもある管理人の田戸は、自分と彼女の関係を知っている。
知らない仲じゃない。

「き、傷とか、だ、大丈夫かい?」

「すいません、また腰を痛めて、少しヤケドもしちゃったみたいで···。」

「え!大丈夫か、うちで手当てして少し休もう。」

「・・・・・すいません。」

管理人、田戸の家は隣り合わせにある。
田戸に肩をかしてもらい、腰や手の痛みをこらえながら歩きだした。

「1階の坂石さんから、花火みたいな音がしたって、連絡があって。」

「バイト先の店で使うクラッカーが暴発しちゃって・・・。」

田戸はぎこちなくうなずいた。
深夜の暴発にちょっと動揺しているようだ。
ボビーオロゴンのような出で立ちの田戸は、
大正時代に建設された、この「さくら荘」を病弱な母に代わり、
ひとりできりもりしている孝行息子だ。

「すいません、お手洗いを・・・。」

田戸の部屋で安心したのか、疲れなのか、急に腹痛が襲ってきた。

大正モダン風なお手洗いの木製扉は、きちんと閉まらない···。

大正モダン風は彼女も自分も気に入っていた。
大正をモチーフにした、ハイカラな少女漫画が好きで、
ここに住んでいるようなものだ。
二人でハイカラな少女漫画について、
カフェで数時間も熱く語ったことがあった。
仲の良い普通の男女カップルに見えただろう。

そんな彼女との過去を思い浮かべていた。

ふと、なにか布が擦れるような、小さい物音が耳に入ってきた。

扉の隙間から覗いてみると、

田戸がトートバッグの中をまさぐっている!
無毛頭と額には冷や汗をかいている。

扉を開け叫んだ。

「田戸さん!何してるんすか!」

パスンッ!

次の瞬間、全部の糸が一瞬で切れた、あやつり人形のように、
田戸の体が崩れ落ちた。


サイレンサー付きの銃口が、こちらを向いている。


「時間があるようで無い、カプセルを渡せよ。」


不気味すぎる冷静な口調で、鍵穴から覗いていた男が語った。




to be next ♯4



【 職人名 】 ※敬称略

 117

 砕け散るれろ

 鍋つかみつかみ

 たどさん

 坂石

【 小ネ単語 】

 指にも軽い火傷をおってる
  おきゃん姐さんが実際に火傷ではないが、手を痛めているところから。

 ファーストフード店のトートバッグ景品
  オモロッキーフライドチキンの景品。

 ひとりできりもりしている孝行息子
  ボケて「たどさん」のプロフィール参照。

【 ストーリー 】

 鍵穴から覗けるように、「はいからさんが通る」みたいな大正モダン風な建物の設定にしました。
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by tencho77 | 2009-05-14 21:01 | 【君が想うよりオオカミ】