【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

君が想うよりオオカミ ♯11

「さあ、出庫の時間だ···。」

骸骨のように頬が痩せこけた男は、怯えきった運転手の若い男に命じた。

「さて、道案内を頼むぜ、ウヒヒヒ···。」

女子高生のえみを舐め回すような視線で攻撃している。
実家おかかえの運転手に拳銃を突きつけられ、指示に従って助手席に座るしかなかったのだ。

「ママはどうなったの!」

「どうなったっていいじゃない。早くクラスメイトの秋絵ちゃん家まで連れてってくれよう。」

軽く舌打ちすると、えみは馬葉に車を出すように命じた。

「家に居ないかも。いまごろ、まだバスに乗ってる頃よ。」

「じゃあ、秋絵ちゃん家近くのバス停で待ち伏せだあ。」

「······馬葉。小谷三丁目のバス停ね。」

怯えきった運転手の若い男はプレジデントを走らせた。

「この人達なんなの!」

「ぐへへへ。いちいちうるさい子だなぁ。あっしのことはどうでもいいじゃろ。」

と言いつつも、骸骨のように頬が痩せこけた男は自分のことを語りだした。

「ぼくのピーアールポイントは、弟が有名なメタル系バンド『 伯爵 』のリーダーということかな。」

自分は兄の伊保 沼太郎であること。
行方不明の弟を探しに、えみの実家、滋賀の権田組を訪れたこと。
道プロは権田組と裏で繋がっていて、非合法な手段で芸能界を牛耳ろうとしていること。
地元山梨のワイフと離婚してきたこと。

べらべらといやらしく語った。

えみは予想以上に落ち込んだ。
自分を女手ひとつで育ててくれた母は、真っ直ぐなヤクザだと思っていたからだ。
真っ直ぐなヤクザは合法的に稼ぎを増やしていく···。

「どうして秋絵に会いたいの?誘拐して売り飛ばすつもり?」

「ウヒヒ。いいや、弟を見つけ出す手がかりになるものを持っているようだからね。」

「着きました···。」

小谷三丁目のバス停が数メートル先に見える。
秋絵の姿は無い。

「では自宅に行くか。」

プレジデントを停め、三人とも降ろされた。

「逃げるなよ、運転手くん。」

周りを気にしながら秋絵の自宅へ向かった。

えみがインターフォンを鳴らす。


「どうしたの?えみ·····!」

秋絵は後ろにいる三人に気づいた。」

「おっとお静かに。」

拳銃を認識したようだ。
素早くえみと三人は中に入ってきた。

「この男がなにか預けただろ?」

「え、ええ。」

「どこにある。」

「気味が悪いんで棄てようと思ったけど·····大事にしまってあるわ。」

骸骨のように頬が痩せこけた男は『 はやくよこせ。 』という風に、手を差し出した。

「渡すわ。でも交換条件があるの。」

「なんだと!こいつが見えねぇのか。」

怯えきった運転手の若い男に突きつけた銃口を、少し女子高生に向けた。
全員、いやな汗が皮膚から噴き出している。

「その銃で、おじいちゃんを殺してほしいの。」

「·····?」


骸骨のように頬が痩せこけた男は『 理解できない。 』という風に、首をかしげている。
緊張という一瞬の沈黙が永く感じた。

「長生きしないだろうけど、長生きさせてみよう、ってクスリで無理に生かしてるの。」

「·····わかった。どこにいる。」

昼間でも薄暗い寝室には、腰の曲がった老人くらいの大きさに、掛け布団が盛り上がっている。

「ちょうど今ぐっすり寝てるわ。さあ。」

冷たい空間に、太陽のような明るい表情で女子高生は訴えている。

沼太郎の表情にはいっそういやな汗が溢れ出した。
銃口を布団の盛り上がりに向けた。
手首から先は、小刻みに振動している。

「さあ。早く···。」

「·····できない。銃声も近所に響くし···。」

「じゃあ貸して。あたしが。」

そういうと秋絵は拳銃を骸骨のように頬が痩せこけた男から受け取り·····

「あなたバカね。」

形勢が逆転した。
銃口は沼太郎に向けられた。

「これ以上、巻き込まれたくないから。」

カバンからカプセルを取り出し、えみを自分のそばに来させた。
布団をめくると、青い魚のぬいぐるみが置いてある···。

そしてカプセルを顔中爪のような痕だらけの男へ向かって投げつけた。


( 東京まで行ける···。 )

助手席が空席となったプレジデントは、京都市内を走っている。

運転手の頬は骸骨のように痩せこけている。

怯えていた若い男は、女組長の娘に引き渡した。

神社や寺が窓ガラスに映る。

( 彼女との御神体イベントを想い出すなぁ···。 )

じんじんと痛む顔面は、安心して少しだけ笑顔になった。




to be next ♯12



【 職人名 】 ※敬称略

 コタニ三丁目

 あっし

 ぼくのピー

 わいふ

 ばっは

 魚青

 じんじん

【 小ネ単語 】

 「さあ、出庫の時間だ···。」
  1979さんのブログより発生。

 「長生きしないだろうけど、長生きさせてみよう、って
  みる挽きさんのブログより発生。

 冷たい空間に、太陽のような
  1979さんのブログより発生。

 彼女との御神体イベント
  これで『 彼女 』が誰であるか想像つきますね。

【ストーリー】

 秋絵の自宅へ弟失踪の手がかりを得る為に、乗りこみます。
 秋絵は圭壱と沼太郎の巧みな作戦にはまり、圭壱にカプセルを返します。
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by tencho77 | 2009-06-03 21:14 | 【君が想うよりオオカミ】