【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

君が想うよりオオカミ ♯13

「見てわかるでしょ!駐車禁止だよ!」

みなし公務員二人のうち、運転手の姿を見つけた一人が顔を赤らめて近づいてきた。
もう一人は黙々とデジカメで車輌の撮影をしている。

渋谷駅前、スクランブル交差点横。

運転手は何も言わず、スーツ上着内ポケットから少しだけ身分証明書を見せた。

「あ!失礼いたしました。覆面なんですね・・・。す、すぐに取り消します!」

デジカメで車輌の撮影を終え、カーナビのようなマシンに入力をしていた相方の手を止めに行った。

「池袋さん。やっぱ東京のこのへんは駐禁きびしいですね。」

「最長どのくらいまで駐禁にならずに路駐できるかなぁ。」

「最長?駐禁に時間の長さは関係ないんじゃ・・・。」

「お前を迎えに駅のそばまで来たのが間違いだな。」

「だって、ひじは痛むし、このわたくし赤池、滋賀県辺りからほとんど徹夜なんですよ。」

右腕には痛々しく包帯が巻かれている。
トラックのドアを思い切り開られのぶつけられので、できた打撲だ。

「でも新幹線で爆睡だったんだろ。かっこつけて白バイなんかで追うからだよ。」

「駅まではマル対の自転車を拝借して追っかけて、行きつく先は新快速と予想していたんです。」

疲れを見取り、目で合図をし車輌の中へ入った。

「車に乗ったとの目撃情報が大阪府警から入って、巡回で駅前交番にパトが無くて白バイを・・・。」

そこまで話すと赤池は小さくため息をついた。
いきさつを話して少し楽になったようだ。

「どうする?赤灯つけるか?」

「置きますか。駐禁されちゃいますしね。」

車輌の頭にちょこんと赤灯を置き、目撃情報のあったセンター街へ向かう。
公安のいつもおおっぴらに捜査できない、もどかしさにイラつきながら・・・。

「これだけ人がいると、きっとかえって目立たないんだろうな。」

「メタル系バンドの奴って、普段から派手な格好じゃないんですかね?」

「さあ、知らんけど。とにかくふたてに別れて探そう・・・。」

センター街の北と南から探し始めた。
渋谷で15時、さらに人が増え始める時間帯だ。

二人がセンター街の中心でおち会った頃、警察無線がイヤホンから伝わってきた。

「聴いたか?」

「はい。新宿のようですね。」

車輌に戻るとフロントガラスに黄色い紙が貼ってある。
点数を減らされたくなければ、罰金を支払うよう書かれている。
赤灯をいい加減にちょこんと置いていた為、盗まれてしまったようだ。

「やれやれ。つくづく治安の悪い街だな。」

「あとで私のほうから交通課へ言って、取り消してもらいますよ。」

二人が乗った中途半端な警察車輌は明治通りから新宿方面に向かった。


現場近くのアルタそばに着くと、所轄の刑事とおぼしき人物が一人待っていた。
待ちくたびれたのか、手にはしわくちゃになったスタバのカップコーヒーを持っている。

「遅かったな。赤池。」

「すいません。渋谷で赤灯パクられて、渋滞にハマってたんです。」

「おや?珍しいですね。」

想いもよらぬ何かを見つけた時の、悪意に満ちたような笑みを浮かべている。

「どうして福岡県警マル暴の、池袋さんがここに?」

「久しぶりだな、比企。福岡で書類受け渡しのすれ違い事件依頼だな。」

福岡潜伏捜査での肩書きは、暴力団対策係だ。
主に中洲や長浜の、いわゆる『 ショバ 』を巡る権力抗争を担当している。

4ヶ月程前、新宿歌舞伎町のテキヤがこの権力抗争にからんでいるとの情報があった。
管轄でもある新宿東署の比企が、その情報資料を持って福岡へ来たのだ。
電車移動の不具合を理由にすれ違いで会う事ができず、いまだ情報資料を受け取っていない。

わざとすれ違いにしたのか・・・。

風営法をエサに、管轄内の風俗店、特に違法性の高いキャバクラなどから裏金をもらっているとの情報もある。
影で歌舞伎町をしきっているのは、この比企との噂もある。
公安部が最もマークしている男だ。

「池袋さん、ずいぶん痩せましたね。」

「ああ。」

いぶかしそうに返事をした。
夜は福岡で表向きはバーテンダーと暴力団対策。
昼は一週間に数回上京し、桜田門で打ち合わせ。
体重が110キロあった面影は今はない。

「そういう比企こそ、生活安全課じゃないのか。」

「まあね。マル対の兄から捜索願いを受けたのが俺なんでね。」

「なぜお前が?」

「当時六本木署勤務だったからね。マル対の発見情報もそこ系由。」

そういうと、手に持っていたスタバのコーヒーカップを投げ棄てた。
中身が少し残っていたらしく、路面には小さく薄茶色のしみができた。

警察無線が入った。
赤池が窓の外から手を伸ばして取る。

「マル対をアシベ会館近辺で発見との事です!」

三人は無言で目を合わせると次の瞬間、現場へ向かって走り出していた。


路上にはビラやチラシが舞っている。
ポンびきの声も夕刻に向けてさらに大きいようだ。
Tシャツにくたびれた革ジャンをはおり、顔面蒼白の男の存在は、この街で違和感はない。

息を少しだけきらした三人の目先には、痩せこけたかつての人気バンドのリーダーがあった。
まるで酒を飲んでいるかのような、ふらついた足取りでなんとか歩いている。

どうする確保するか・・・。
いや、騒ぎを起こしたくはない・・・。

三人はお互いに距離をおいて伯爵のリーダーに近づいていった。

あまり人気の無い路地で囲んで確保しようとした瞬間、

「 ふなーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 」

突然叫んで走りだした!

あわてて三人はあとを追う。
歌舞伎町を出て、駅方面へ向かい線路下大ガードを抜け、都庁のある西新宿のビル街に入った。

ようやく三人は伯爵のリーダーを取り囲むことができた。

「伊保、能人さん・・・ですよね。大丈夫です、けいさ・・・」

プスン!

急に伯爵リーダーの左胸に小さな赤い円が描かれた。

地面に向かって崩れていくのが、スローモーションのようにみえた。

三人の追っていたマル対は、カエルの逆立ちのような格好になり・・・動かなくなった。






to be next ♯14





【 職人名 】 ※敬称略

 psycho?

 新快速よす行

 知らんけど

 みる挽き

 元110キロ

 ふな

 ぷっすんQ

【 小ネ単語 】

 「駅まではマル対の自転車を拝借して追っかけて
  もちろんサムライ号です。

 福岡で書類受け渡しのすれ違い事件
  実話のようです・・・。書類は『ボケて本』のようです・・・。

 手に持っていたスタバのコーヒーカップを投げ棄てた。
  みる挽きさんの以前のプロフ画像イメージから。

 「 ふなーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 」
  たまに、はくしゃくさんがチャットで叫んでた!?

 カエルの逆立ちのような
  はくしゃくさんの伝説のボケ
 
【ストーリー】
  池袋刑事は赤池、そして所轄の比企と合流、伯爵リーダーを発見しますが・・・。
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by tencho77 | 2009-06-12 21:47 | 【君が想うよりオオカミ】