【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

君が想うよりオオカミ ♯14

「もう静岡あたりですか?」

「いいや。まだ名古屋だ、おバカだねぇ。あんた、うたた寝しはじめてたからね。」

運転手をしてくれている、骸骨のように頬が痩せこけた男は親しげに応えた。
いつしか、お互い身内を探し、助け出すという共通目標で心が通じていた。

京都から約二時間。
疲れもあり、景色が単調な高速道路から一旦降りていた。
解放された安心感も手伝い、車中眠らずいろいろ話してきた。
場をなごませるために、お下劣な話題にも付き合った。
ゲイの圭壱にとって、女性ネタはなんの変哲も無いどうでもいい話しだった。

「能人は仕事ではどんなかんじだった?」

「どうでしたかね。僕はアイドル系のマネージャーなので、バンド系の弟さんとは
 事務所や現場でほとんど一緒にならなかったので···。」

「そうか···。」

ハンドルを握る手はしっかりしているが、残念そうに少しうつむきかげんになった。

「あ!そういえばここ名古屋で、弟さんと一緒に仕事したことあります。」

「おお!例えばどんな?」

「料理番組の『 安陪教官日記! 』ってやつです。全国ネットでは、たまにスペシャルでやる···。」

「ああ、あのレポーターの安陪が、グルメ教官とか言ってインチキくさいやつね···。」

「そう!料理がまずくて弟さん、その他大勢と一緒に頑張って、ブラックジョーク言ってましたよ。」

「あの番組、マニアックでシュールな料理ばっかり紹介だもんな!」

そう言って、顔面がまだ少し痛かったが大きく笑った。
運転手も笑った。
こみあげてくる、いままでのつらさを紛らわすように···。

「じゃあ、名古屋地元の番組でも見てみるか。」

カーナビの画面を、ガイドマップから適当なテレビ画面に切り換えた。

テレビを眺めながら運転手と一緒に笑っている。
でも心の中はけして笑っていなかった···。

ティーダ乗りの友人、田戸さんはどうなっただろう。
警察は動いているのだろうか。
ニセ警官には襲われたが···。
何もかも信用できない。

やはり気がかりなのは彼女のことだ。
マネージャーという仕事として。
親友として。

異性には特別な感情は湧いてこない。
同性には、心の底からこみ上げてくる『恋愛』というモノサシの感情をいつも推し量ってしまう。

ただ、彼女に対しては、いつもと違う何か不思議な感覚が溢れ出してくる。
彼女のことはもちろん好きだ。
でもそれは、嫌いではないという意味だけでの『 好き 』ではなかったか···。

トゥルトゥル!

携帯が鳴った。
我に返ったような表情で携帯の画面を見つめた。

『 道屋社長 』と表示されている。

何度か着信があったが、監禁されている時以外でも、わざと出ていない。
ほぼ丸一日音信不通、『 クビ 』の宣告か。
小刻みに震える指で受話器の外れたマークを押した。

「···はい。」

「おう、沖谷君か!いままでどうしてたんだ。」

あまり語りたくなかった。
『 東京事務所   パスワード 』というメールでそっちに向かっていることも。
無言のまま携帯を耳にあてている。

「まあいい、実は·····。」

通話の相手がそう切り出そうとした時、運転手の断末魔の叫び声が聞こえた。

運転手の見つめるテレビ画面を見ると、

『 ニュース速報 ロックバンド伯爵のリーダー 伊保 能人さん(24)新宿で銃で撃たれ死亡 』

と残酷なテロップが流れている。

言葉につまり、何も話しかけることができない。
二人を乗せたプレジデントは白川公園沿いに急ブレーキで停車した。

「お、沖谷君!」

「いまテレビのニュース速報で見ました···。伯爵のリーダーのことですよね。」

「違うんだ!」

「なにが違うんですか!こんな時にわざわざ私の解雇連絡ですか!」

言いようのない怒りがこみあげてくる。
八つ当たり気味に口走ってしまった。
無断欠勤によるクビは確定か···。

「ま、まだ権田組のプレジデントに乗っているのか?」

「·····はい。」

「く、車には爆弾が···。」

「え?」

道屋社長はインプラントの手術をしたばっかりで、滑舌が悪くよく聞き取れなかった。

「爆弾が仕掛けられてんだよ!その車には!」

大声で怒鳴るその声は携帯から漏れ、涙を滝のように流している運転手にも聞こえた。

「そ、そんな社長!本当ですか!」

通話がよく聞こえるように、うるさいテレビ画面をカーナビに戻した。

『 00:21:07』

時計のような表示の数字が、時間を逆に刻み続けている···。

運転手と、一瞬にして強張った表情を見つめ合った。

「権田の逆恨みだ!ま、万が一、敵に特攻する時の為の自爆装置だそうだ。」

「どうやって止めるんですか!」

「そんなの、し、素人にはわからん。とにかく車から逃げろ!」

圭壱はすぐに社外に飛び出した。

「沼太郎さん!早く!」

涙を滝のように流している運転手は降りようとしない。
無言で助手席のドアを勢いよく閉めた。

「伊保さん!なにしてるんすか!早く!」

「弟の元へ逝く···。」

「だめです!沼太郎さん!弟さんの分も···。」

「あんたは彼女を探し出せ、絶対に。」

車外へ引きずり出そうと運転席側に走り寄った。
伊保 沼太郎はキーをロックしてしまい、ドアは開かない。

「伊保さん!伊保さん!開けろ!」

右手が伸びきってしまうくらいの勢いで車は走り出した。

「伊保さーん!」

霞んだ小さい黒い点になっていく、プレジデントを眺めながら叫び続けた。

なにも話さず道屋との携帯を切り、かけ直した。
かけ直した相手はすぐに出た。

「プレジデントの自爆装置の解除方法を教えろ!」

「なんのことやら。夕飯の焼きカレー作りで忙しい。せいぜいあがけ。じゃ。」

人間とは思えない冷酷なセリフを浴びせられ、かけ直した相手にすぐに切られた。

「馬葉ーーーーーーーーーーーー!!」


叫びながら耳の遠くで、爆発音の響きを聴いたような気がした···。






to be next ♯15


【 職人名 】 ※敬称略

 トゥルトゥル

【 小ネ単語 】

 

 福岡で書類受け渡しのすれ違い事件
  実話のようです・・・。書類は『ボケて本』のようです・・・。

 手に持っていたスタバのコーヒーカップを投げ棄てた。
  みる挽きさんの以前のプロフ画像イメージから。

 「 ふなーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 」
  たまに、はくしゃくさんがチャットで叫んでた!?

 カエルの逆立ちのような
  はくしゃくさんの伝説のボケ
 
【ストーリー】
  池袋刑事は赤池、そして所轄の比企と合流、伯爵リーダーを発見しますが・・・。
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by tencho77 | 2009-06-19 21:09 | 【君が想うよりオオカミ】