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【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

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心地よい風が小さな傷を負った頬にあたっている。

どこか温度差を感じる、まったーりとした風だ。

あの原風景に想える紅蓮色背景の島。
その草原の土手に彼女と並んで座っている・・・。

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「なあ。あの野球選手とはその後どうなの?」

自分でもこの質問をしている理由がわからなかった。
そう、自分はゲイだ。
ノンケの男と女の関係だ。
なぜ気になる・・・。

「あら?もしかして妬いているの?」

彼女は八重歯がチラつく憎たらしいくらいの笑顔で聞いてきた。
彼女のことは友人、いやそれ以上の親友として好きなはず。

「いや・・・お前のマネージャーとして・・・。」

「マネージャーとして?」

彼女はくり返しきいてきた・・・意味深に。

「そ、そういう諸子はどうなの?」

「どうなの?って・・・。」

「・・・俺のことをどう想っている?」

「前にも言ったでしょ。ケイゴのことは・・・。」

大正モダンなカフェで熱く語った時に聴いた台詞の通りなのか。
その時のことを覚えていないふりをして聞き返した。

「前に言われたことって?」

「圭壱の存在なんか、なければいいのよ!」

そう叫ぶ諸子の姿は秋絵に変わり、鋭いナイフが胸に突き刺さった。

「んぐぐぐぐっ・・・。」

顔に無数の洗濯バサミをつけられた時とは比べものにならない
とてつもない痛みと苦しみに支配され、断末魔の叫びをあげた。
小さな何本もの滝が出来るように血が流れ出ているようだ。





「沖谷さん!沖谷さん!」

( はっ!ここは・・・。 病院か?)

こちらを覗きこんでいる顔が三つ。
背景は二列にきれいに並んだ緑の木々だ。

名古屋白川公園・・・。
疲れ果て眠ってしまっていたようだ。
辺りはすっかり闇が支配している。

「ものすごいうなされていたぞ。」

覗いている顔の一つが心配そうに言ってくれている。
名古屋ローカルの番組『 安陪教官日記! 』のレポーター、同じ事務所の仁科 茂だ。

「あ、こちらは大阪府警の警部、磯部さん。連絡を受けて一緒に来たんだ。」

覗いている顔のもう一つ、やはり同じ事務所の俳優、イトゥが紹介した。

「ああ。悪夢にうなされてた。しかし・・・あの島は・・・。」

「島?」

警部が尋ねてきた。

「いいえ。夢の中のことです・・・はっ!伊保さんは?」

自分を置いて時限爆弾付のプレジデントで走り出した伊保 沼太郎はどうなったのだろう。

警部は首を静かに横に振った。

「新名古屋港湾から車輌の残骸が引き揚げられています。

 残念ながら・・・絶望的かと・・・。

 芸能人である弟さんに関しては追悼集会が行われる予定と伺っています。

 ドライバーだった組員は指名手配をかけている最中です。

 近くの署でお身体の治療と、いろいろ詳しく話しを聞かせて下さい。」

ある程度覚悟はしていたが、ショックで立ち上がれない。
仁科とイトゥに抱きかかえられ警察車輌へ向かった。


一瞬イトゥの顔に、不敵な笑みが浮かんだように見えた・・・。




to be next ♯19
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by tencho77 | 2009-10-01 01:57 | 【君が想うよりオオカミ】