「ほっ」と。キャンペーン

【君が想うよりオオカミ】    男女の間に友情という観念は成立するのかを描く小説       【TVブロ酢】           辛口、甘口でないスッぱい批評        【となりのレトロ】


by tencho77

<   2010年 01月 ( 1 )   > この月の画像一覧

『被疑者を追い、島へ上陸。島は横須賀市所有の猿島と思われる。』

猿島は東京湾に浮かぶ無人島。
日中は観光客で賑わうこともあるが夜は当然、暗闇が支配している。
その昔、軍事要塞として砲台などの設備が施されていた。
戦後は観光地として運営されていたが、1993年に閉鎖、航路も廃止され立ち入り禁止とされる。
空白の二年間を経て1995年に再開された・・・。

「猿島へ逃げ込んだか。海上保安庁に知れるとやっかいだな・・・。」

佐間を追っている比企からのメールを見て、池袋はつぶやいた。
仙台駅より元タレントの部寺 穂香を保護すべく、彼女の入院している病院へ向かっている。

( 赤池に先を越されただろうか・・・。 )

途中、宮城県警にはあえて立ち寄らなかった。
公安として機密に動いている部分が多いのだ。

芸能プロ社長、道屋の携帯から違法にデータを略取している立場もあった。
いつしか、一連の事件の真相解明にはデータの解析が急務との信念を持つようになっていた。
そのデータで解明されたリストの二人目が部寺 穂香だ。

東村山生まれの彼女は、大型新人歌手のふれこみでデビュー。
ファーストアルバム『 春ノウタ 』は、オモロッキーフライドチキンのCM曲や、
当時売れっ子の同じ事務所所属のメタル系バンド『伯爵』リーダーからの楽曲提供、
青柳ロキfeat. SoulJaとのコラボなどで瞬く間にミリオンセラーとなった。

しかし直後の御神体イベントで人気アイドルグループSMAPPY、徳薙つよしとの交際報道が
加熱しミュージシャンの道をあきらめ、グルメレポーターに転身。
そして職業病ともいえる食べ過ぎで激太りしてしまった。
その精神的ダメージからか、食べ物をいっさい口にいれないほど体調を崩し突然の引退。
現在は仙台より小一時間ほど離れた心療内科にひっそりと入院している。

「部寺さんは何号室ですか?」

病院の窓口へおもむろに手帳をみせ尋ねた。

「右側の棟、530号室です。先ほど・・・」

「!・・・先ほど・・・なんですか。」

「同じように刑事さんが尋ねて来ました。」

病院なので駆け上がるわけには行かなかったが小走りで向かった。

( やはり先を越されたか。)

こぶを何回か軽くゆっくりとスウィングさせた後、慎重にドアをノックした。

返事がない。すでに屍に・・・・・。

ドアを少しづつ開いた。

そこに彼女の姿は無かった。
トイレにでも行っているのか・・・。

すると下がってきたエレベーターから携帯でメールを打ちながら車椅子に乗った穂香が降りてきた。

「部寺さ・・・」

その時ちょうど、穂香を真ん中にした反対側に赤池の姿が現れた!

赤池は人を罵るような笑みを浮かべると、上着から銃を抜き、静かにゆっくりと構えた。
とっさに池袋も赤池に向かって銃を構える。

緊張した空間の中心に挟まった穂香は、まだ気付かずにメールを打っている。

「赤池!!」

病院であろうと、他の患者や職員が騒ごうと構わない。
池袋は怒鳴った。

「やっぱり私も消去しに来たのね!」
穂香が気付いて叫ぶ。


パスン!パスン!


消音銃の銃声が廊下に乾いた音で響き渡った。

「ぷ・・・・・あ・・・・ぐっ!」

苦悶の表情で赤池が前のめりに倒れる。

先程まで携帯だった穂香の右手の中身は、細い煙の靡く銃に変わっている。

「部寺さん!どこでそんなものを入手・・・」


パスン!パスン!




再び乾いた銃声が、病院の廊下を駆け巡った。










to be next ♯20
[PR]
by tencho77 | 2010-01-30 02:26 | 【君が想うよりオオカミ】